- 花粉症・アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎・花粉症
アレルギー性鼻炎・花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといったつらい症状だけでなく、日常生活に支障を来したり、他のアレルギー疾患に影響を及ぼす可能性があります。
本コラムをご覧いただき、アレルギー性鼻炎・花粉症についての知識や治療法などをご理解いただき、治療の一助となれば幸いです。
本記事の目次
アレルギー性鼻炎・花粉症とは?
アレルギー反応とは、体内に異物が入った際に体を守ろうとして起こる免疫反応が過剰に起きている状態です。アレルギー反応の原因となる物質(アレルゲン)に鼻粘膜が反応し、鼻水、鼻づまり、くしゃみといった症状を引き起こすことをアレルギー性鼻炎といいます。
アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキなどの花粉がアレルゲンとなり、特定の季節に症状が出る「季節性アレルギー性鼻炎」、つまり「花粉症」と、ダニやハウスダストなどがアレルゲンとなり、オールシーズンで症状が出る「通年性アレルギー性鼻炎」の2種類に分類されます。
アレルギー性鼻炎の患者数は年々増加傾向にあり、日本人の2人に1人、つまり約50%がアレルギー性鼻炎であると考えられており、これが国民病といわれるようになった所以です。
日本人におけるアレルギー性鼻炎・花粉症の有病率
全体 約50%(2人に1人)
花粉症 約40%(2.5人に1人)
通年性 約25%(4人に1人)
(花粉症と通年性アレルギー性鼻炎の両方を持っている方がおられるということになります)
また、近年ではアレルギー性鼻炎をもつお子さんの増加と発症の低年齢化が報告されています。以前は小学校にあがる頃からでしたが、最近では幼児期からでも発症することがあります。アレルギー性鼻炎の悪化により、気管支喘息やアトピー性皮膚炎など、その他のアレルギー疾患を引き起こすこともあるため、正確に診断し、早期からの治療や対策が大切な病気であるといえます。
アレルギー性鼻炎・花粉症の原因
アレルギーの原因となるアレルゲンは花粉以外にもたくさんあります。
主なアレルゲンと言われるのは、スギ、ヒノキ、ブタクサといった花粉、ダニ、ハウスダスト、ペットのふけ、カビなどです。
植物の花粉は季節によって症状が現れ、花粉症の最も多い原因はスギ花粉です。スギ花粉は春先に多く飛散しますが、スギ以外にもさまざまな植物の花粉が花粉症の原因になり、一年を通して花粉症の症状が起こる可能性があります。
時期によって飛散する花粉を分けていくと、九州では図のような花粉の飛散が認められます。また、ダニやハウスダストはオールシーズン症状が現れます。
近年では、大気汚染物質のPM2.5やカビ、細菌などが含まれる黄砂でアレルギーの症状が出る方が増えています。
アレルギー性鼻炎・花粉症の症状
空気中の漂う花粉やハウスダストなどのアレルゲンが鼻に入ることで症状が引き起こされます。
3大症状
その他に、
目のかゆみ
のどの違和感・かゆみ・イガイガ
頭痛、倦怠感、集中力の低下
咳
肌荒れ
などといった症状が現れる場合があります。
❓子供の鼻血の原因にも❓
アレルギー性鼻炎が小さなお子さんの鼻出血の原因となっていることがあります。鼻炎で鼻が気になるために鼻の中に指を入れていじったり、鼻を強くかんでしまい出血を起こします。さらに、血が止まった後にはかさぶたができてしまうために鼻がつまる、そしてまた鼻をいじったり、鼻をかむことで、かさぶたがはがれて出血するという悪循環により、頻回に鼻血がでてしまいます。また、鼻炎の症状がない場合でも、鼻の中をみるとアレルギー性鼻炎の状態であったり、キズ跡があることが多くあります。
こういったことから、アレルギー性鼻炎の治療をすることで鼻出血の頻度や程度が減ったり、そもそも出血をしにくくなるため、早めの受診をお勧めしています。
アレルギー性鼻炎・花粉症の検査
鼻の中の状態を観察するために、鼻鏡や内視鏡で鼻水の性状や鼻粘膜の腫れ、鼻づまりの程度などをチェックします。さらに、目やのどのかゆみ、鼻出血の有無に加えて、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などがないかも確認します。
アレルギー性鼻炎の検査には様々な方法がありますが、アレルギー性鼻炎・花粉症の治療や予防には、まず自分が何のアレルギーなのかを知ることが重要です。
当院では下記の血液検査を実施しております。
1)ドロップスクリーン
少量の血液で検査可能なアレルギー検査機器です。約30分で41項目のアレルゲンが検査可能です。
調べることができる検査項目
花粉やダニ、動物などの「吸入系・その他」19項目と、「食物系」22項目の合計41項目のアレルゲンが検査可能です。
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2)View39
1回の静脈採血で39項目のアレルゲンが同時に測定できるアレルギー検査です。検査結果は約1週間で判明します。
検査費用は保険適用で、約5,000円(3割負担の方)です(その他、診察料や処方があった場合には処方箋料などが別途必要になります)。
調べることができる検査項目
花粉やダニ、動物などの「吸入系・その他」19項目と、「食物系」20項目の合計39項目のアレルゲンが検査可能です。
アレルギー検査以外に血液型や甲状腺機能など、その他の項目も同時に調べたいという方には静脈採血が必要となりますので、本検査を一緒にすることをお勧めしています。
3)RAST検査
View39と同様に静脈採血によるアレルギー検査です。View39はコストパフォーマンスを高めるために検査できる項目がセット化されていますが、RASTはセットのアレルギー検査ではなく、以下の項目からご自身が気になっているアレルゲンを自由に組み合わせて検査を行うことができます。
ただし、一度に検査できる項目は13項目までと決められています。検査結果は約1週間で判明します。検査費用は保険適用で、3割負担の方で1項目あたり330円、全13項目で4,290円です(その他、診察料や処方があった場合には処方箋料などが別途必要になります)。
アレルギー性鼻炎・花粉症の治療
くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状を緩和させる薬物療法(対症療法)と、アレルギーそのものを治療することでアレルゲンに対しての体質改善が期待できるアレルゲン免疫療法、および手術療法の3つがあります。また、日頃からのアレルゲンの除去や回避も症状の改善に有効です。
1)薬物療法
アレルギー性鼻炎は、花粉などのアレルゲンが体内に入ることによって作られるヒスタミンという物質によりアレルギー症状を引き起こします。このヒスタミンが起こす症状を抑えることが、アレルギー性鼻炎の治療として有効になります。
主に以下の3種類あります。
・抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)
アレルギー性鼻炎のお薬で主に使用されるのが抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンの発生と放出を抑えることにより、鼻水やくしゃみの軽減が期待できます。安全性は高いお薬ですが、お薬によっては眠気、のどの渇き、集中力の低下などの副作用が現れる場合があります。
・抗ロイコトリエン薬
抗アレルギー薬が主に鼻汁やくしゃみに効果を示すに対し、抗ロイコトリエン薬は主に鼻づまりに効果を示します。副作用はほぼないとされていますが、症状の緩和に十分な効果が期待できないこともあります。
薬の特性からアレルギー性鼻炎だけではなく、気管支喘息にも効果があり、咳が出ているアレルギー性鼻炎の方に効果的です。
・鼻噴霧用ステロイド(点鼻薬)
ステロイドとは抗炎症・免疫抑制効果のある薬剤です。内服ステロイドの長期の使用は副作用が心配ですが、点鼻薬でのステロイド投与は副作用の心配がほぼなく、効果の高い非常に優れた薬です。鼻粘膜にも十分な効果を示し、主に鼻づまりの緩和が期待できます。
点鼻薬についてはこちらも参照ください☞☞☞点鼻薬の種類とその注意点
その他、点眼薬を併用したり、ネブライザー療法や鼻の洗浄処置を行っています。症状やライフスタイルを考慮し、様々なお薬が選択可能です。
2)初期療法(花粉症)
花粉が飛び始める前(症状が出る前)、あるいは症状が軽い時点からお薬を開始することを『初期療法』といいます。
アレルギー性鼻炎、特に花粉症は、症状が悪化してからお薬を開始してもなかなか効果が出ません。しかし、症状が出る前、あるいは症状が軽いうちにお薬を開始すると、花粉の飛散量が多くなった時期でも症状をコントロールしやすく、そのシーズンの症状を軽くすることができます。
実際には、花粉の本格飛散が始まる約2週間前からお薬を開始することが推奨されています。スギ花粉症の場合で考えると、2月初旬から本格飛散が始まるため、1月中旬頃からお薬を開始することになります。
3)舌下免疫療法(スギ花粉症・ダニアレルギー)
アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を微量ずつ、長期間にわたり投与することで、アレルギー反応を起こしにくくするというアレルギー免疫療法の一つです。1日1回、舌の下にアレルギーの原因物質のエキスを含み、口腔内の血管から体内に吸収させる(舌下投与)ことで、アレルギー反応を起こしにくい体質を作り出します。現在、日本ではスギ花粉症とダニアレルギーに対し、この治療を受けることができます。全体の80%の方に体質改善が期待できる治療といわれていますが、個人差があります。
期待される治療効果
・くしゃみ・鼻水・鼻づまりの改善
・目のかゆみ、涙目の改善
・アレルギー治療薬の減量
・治療期間の短縮
・生活の質(QOL)の改善
対象年齢は6~65歳で、3~5年は継続する必要があります。
スギ花粉症の場合は、スギ花粉飛散期には治療が開始できず、花粉飛散期をはずした6月から11月末までの間に治療を開始します。一方、ダニアレルギーの場合は、1年中、いつでも治療開始が可能です。
薬物療法では効果がない方、お薬の副作用がつらい方、他の病気の影響でお薬が服用できない方には、ぜひ検討いただきたい治療です。
詳細はこちら☞☞☞舌下免疫療法について
4)手術
アレルギー性鼻炎・花粉症の治療において、薬物療法や処置などにより症状が改善しない場合、あるいはより根本的な解決を目指す場合には、手術を選択することもできます。当院では、「鼻中隔矯正術」、「粘膜下下甲介骨切除術」、「翼突管神経切除術(後鼻神経切除術)」などを行っております。
内視鏡検査やCT検査などを行い、鼻の中の状態を詳しく調べた上で、状態に応じて術式を決定します。
・粘膜下下鼻甲介骨切除術
鼻の粘膜がひどく腫れ、鼻炎症状が投薬治療で改善されない場合に適応となります。鼻腔レーザー照射術とは異なり、鼻炎症状を抑制する効果が生涯続く手術です。多くの場合、より鼻閉改善の効果を期待して、鼻中隔矯正術とともに行います。
・経鼻腔的翼突管神経切除術(後鼻神経切除術)
後鼻神経は鼻水やくしゃみを引き起こす神経であり、この神経を切除することで、症状の軽減が期待できます。粘膜下下鼻甲介骨切除術に引き続き、後鼻神経を選択的に切除します。
詳細はこちら☞☞☞日帰り手術について
アレルギー性鼻炎・花粉症の予防
アレルギー性鼻炎・花粉症の対策として、アレルゲンを可能な限り、鼻やのど、目などに入れないようにすることが重要です。
そのための対策は、以下の通りです。
・まずは医師の診察を受け、アレルギー検査を行い、自分のアレルゲンが何なのかを確認しましょう。その上で、アレルギー症状を出さないよう、アレルゲンの除去、回避が重要です。
・外出時や掃除をする際には、マスクやメガネを着用しましょう。花粉やダニ、ホコリの影響を直接的に防止する最もポピュラーな方法です。花粉はウイルスより直径が大きいので、風邪予防用のマスクで十分花粉対策になります。また、メガネはかけるだけでも目に降りかかってくる花粉を直接シャットアウトできるので、目のかゆみ、充血対策になります。
・屋内に花粉を持ち込まないよう、帰宅したら玄関で衣服についた花粉をよく払い、手洗い、うがいを行いましょう。目や鼻のうがいも有効です。衣服の素材として、ナイロンのような、スベスベした素材のものを中心に着ると、衣服に付くそもそもの花粉の量を抑えることができます。
・花粉シーズンには、ドアやサッシをきちんと閉め、室内に花粉が入らないようにしましょう。また、布団を外に干すのを控え、できるだけ布団乾燥機などを使用するようにしてください。どうしても干したい場合には、花粉の飛散が比較的少ない午前中に干しましょう。取り込む際は、布団をはたいて、さらに布団の表面を掃除機で吸い上げると、より効果的です。
・衣類や布団、枕などの寝具類、クッションなどにはダニやホコリが多くついています。また、花粉が持ち込まれていることも多いため、こまめに掃除をしましょう。
・室内が乾燥すると、花粉やダニ、ホコリが舞いやすく、さらに症状が悪化しやすくなるため、加湿器や空気清浄機も有効です。
・晴れた日や気温が高めの日、乾燥した日や風邪が強い日などは花粉が飛びやすいため、このような日は外出を控えましょう。
・花粉の本格飛散の約2週間前から、お薬を服用することで、体の内側から症状を未然に予防することができます。ただ、薬を飲めばあとは対策しなくてよいということではありません。予防してもしすぎることはありません。その他の対策も怠らないようにしましょう。
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