耳鼻咽喉科領域専用CT
これまでCT検査が必要と思われる方は近隣の総合病院に紹介し、検査を受けていただく必要があり、時間的にも、経済的にも大きな負担をおかけすることとなっていました。今回、患者さんの負担を軽減するため、コーンビームCTを導入しました。
※頸部(甲状腺や唾液腺を含む)に対する性能は低いため、そのような部位の異常が疑われる場合は、総合病院でのヘリカルCTを行っていただきます。
- 長期間通院しているが、なかなか症状が改善しない
- 色んな病院を受診したが、原因がわからない
- 仕事や家庭の事情で、何度も通院するのが難しい
- なるべく費用を抑えたい
- 放射線を浴びることに不安を感じる
- 子どもにもCT検査を受けさていいのか不安
コンビームCTの特徴
予約なしで、当日すぐに撮影できます。検査時間は約1~2分(実際の撮影時間は20秒程度)で、検査結果もすぐに確認できるため、治療方針の決定や治療の効果判定に有用です。
一般的なCT(ヘリカルCT)の1/7以下の被ばく線量で検査が可能なため、安心して検査を受けていただけます。
※くわしくは、以下の「放射線の量の目安」をご参照ください。
当院でコーンビームCTを行った場合の検査費用は3,390円(3割負担の場合)となります。通常のCT(ヘリカルCT)の検査費用は4,000~4,500円ですが、総合病院に紹介して撮影を行っていただくため、検査費用以外にも諸費用(紹介状や初診料など)が発生するため、半額程度で検査が可能です。
コンビームCTの特徴
通常のCTとは異なり、撮影範囲の狭い耳鼻咽喉科領域に特化しているため、鼻・副鼻腔疾患や中耳疾患などの精密な診断を行うことが可能です。
以下のような場合に有用です。
副鼻腔は上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞の4つに分かれています。一般的なレントゲン撮影では上顎洞の炎症はある程度評価できますが、それ以外の部位は判断しづらいことがあります。
CT検査では、すべての副鼻腔を細かく観察し、副鼻腔炎の範囲や程度を評価できるため、治療効果や手術適応の判定に有用です。
また、副鼻腔炎は細菌が原因となることがほとんどですが、齲歯(むし歯)や真菌(カビ)が原因となる場合があり、通常の副鼻腔炎治療を行っていても改善しません。これらの特殊な副鼻腔炎の診断に加え、副鼻腔の腫瘍なども発見することが可能です。
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歯性上顎洞炎
虫歯や歯周病(歯槽膿漏)が原因となって起こる副鼻腔炎です。
鼻性の上顎洞炎は両側の上顎洞が炎症を起こしますが、歯性上顎洞炎は原因歯のある片側だけが炎症を起こすのが特徴です。
歯の痛みに加えて、片側の頬部の痛みや重い感じ、膿のような鼻水、悪臭などの症状を認めます。治療は原因となっている歯の治療と抗菌薬やネブライザー治療などの耳鼻科的な治療を行いますが、難治性の場合は副鼻腔手術を行います。 -
副鼻腔真菌症
真菌(カビ)が原因となって起こる副鼻腔炎です。高齢者や体力の弱い方に多いですが、まれに若い方でも起こることがあります。
歯性上顎洞炎と同様に、片側のみの副鼻腔炎症状に加え、CTで上顎洞壁の肥厚と石灰化を伴った一側性の副鼻腔炎陰影を認める場合に疑います。
副鼻腔真菌症は通常の抗菌薬投与を続けても改善は見込めず、手術を行うことが一般的です。
免疫機能が低下している場合には、眼や脳の中に炎症が波及してしまい、予後不良となることがあります。 -
好酸球性副鼻腔炎
喘息に合併することが多く、薬物療法で改善することが難しい難治性の慢性副鼻腔炎です。治療においては、ステロイド薬が有効ですが、副作用の問題があるため、長期投与はお勧めできません。そのため、手術が治療の第一選択となります。ただし、従来の慢性副鼻腔炎よりも再発率が高いので、術後の治療が重要で長期の経過観察が必要となります。2020年に新たな治療薬として分子標的薬「デュピルマブ」が保険適用となり、好酸球性副鼻腔炎の新たな治療法として期待されています。当院でも重症な患者さんに投与を行っています。
外傷に伴う骨折の評価、診断が可能です。ただし、当院では骨折の整復は行っておりませんので、治療が必要な場合には近隣の総合病院へ紹介させていただきます。
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鼻骨骨折
鼻骨の骨折は顔面骨の骨折の中で最も多い骨折です。交通事故やスポーツ、けんか、転倒、転落などの不慮の事故が原因で骨折します。軽度の衝撃でも骨折することがあります。
偏位の程度により整復が必要になります。受傷してからおよそ2~3週間以内の新鮮例であれば皮膚に傷をつけずに整復が可能とされています。
鼓膜の奥に中耳と呼ばれるスペースがあり、その中には耳小骨という骨が存在します。音は鼓膜に到達した後、耳小骨を介して内耳や神経へと伝わっていきます。この中耳や耳小骨の異常が原因で起こる難聴を伝音難聴といいます。
外耳道(耳の穴)からは中耳を観察することはできないため、原因不明の伝音難聴の診断にはCT検査が有用です。
その他、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの特殊な中耳炎の診断や重症度の判定も可能です。
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真珠腫性中耳炎
鼓膜の一部が内側(中耳)に陥凹しておきる中耳炎です。陥凹した鼓膜の内側に角化物(垢)が溜まりやすくなり、これが細菌や真菌の培地となり感染、炎症がおこります。この炎症により、周囲の骨を破壊しながら増大するとされています。
治療には手術が必要なことがほとんどで、真珠腫を取り除き、破壊された鼓膜や耳小骨を新しく再建します。進行がゆっくりである場合や病変の部位によっては点耳薬や耳の清掃、鼻からカテーテルによって空気を送る方法(通気療法)といった保存療法で経過観察をすることもあります。正常のCT画像(右耳)
中耳腔に良好な含気を認める真珠腫のCT画像(右耳)
真珠腫により頭蓋底が融解(黄色→)しており、外側半規管の骨も一部融解(黄色▲)している。
唾液腺(主に顎下腺)から口につながる唾液が通る管の中に結石ができる病気を唾石症といいます。触診で診断できることもありますが、唾石が深い位置にある場合には診断ができません。
唾石はCT検査では白く、はっきり写るため、どの位置にあっても正確に診断することができます。なお、唾液腺の腫瘍の診断にはヘリカルCTでの評価が必要なため、近隣の総合病院へ紹介させていただきます。
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唾石症
唾石症とは、唾液腺または導管に結石が生じ、唾液流出障害や唾液腺の炎症が起こる病気です。小さな唾石であれば自然に排出されることもありますが、大きさや病状によっては、手術による摘出が必要になります。
虫歯のような強い痛みがある
安全性が高く、負担が少ないコーンビームCTですが、当院では医師が診断や治療に必要と判断した場合にのみお勧めしています。