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花粉症は注射で治る?
今年は、スギ花粉の飛散量が例年と比較してやや多いということもあり、2月上旬から現在に至るまで花粉症の症状で来院される方が多くなっています。
また、ヒノキ花粉の飛散もすでに本格化しており、症状が持続している方が多い状況です。
そんな中、外来に来られた方から、以下のようなお話をお聞きすることがあります。
「以前、注射を打って、花粉症は治ったはずなのに、今年、また症状が出た。」
「前に別の病院で花粉症の注射を打ってもらっていた。今年は症状が強いから、すぐに打ってほしい。」
「薬(市販薬)が効かない。注射が効くと聞いたから打ってほしい。」
「自分は花粉症があったが、注射を打って治ったので、子どもにも打ってほしい。」
いずれも、くわしく話を聞いたり、注射を打ったという病院に確認すると、「ケナコルト-A®」というステロイドの筋肉注射のことを言われている方がほとんどです(ケナコルト-A®についてはこちら)。
「1回の注射で花粉症がよくなる」などと謳われているものはこの治療法である可能性があります。
「ケナコルト-A®」は長く効くステロイド薬で、花粉症に対して使用する際には大量のステロイドをスギ花粉飛散時期に投与して数ヶ月効果を持たせようという治療法となります。1回の投与で症状を軽くできる方もいるため、手軽に見えます。
では、この治療法はオススメなのでしょうか?
結論は、「効果はあるが、重大な副作用もあるため、慎重に行うべき」という位置づけのため、この治療法はあまり推奨されておらず、ほとんどの耳鼻咽喉科では行われていないというのが実情です。
また、当院でも行っていません。
その理由は、ステロイドの副作用です。
- 易感染性(感染症にかかりやすくなる)や副腎機能不全
- 注射部位の皮膚硬結・陥没
- 糖尿病、高脂血症、高血圧
- 胃・十二指腸潰瘍
- 肝機能障害
- 緑内障
- 精神症状(不眠やうつ)、全身倦怠感
- 骨粗しょう症
- 生殖機能障害、生理不
- 満月様顔貌、顔面紅斑など
一般的にこのような副作用が出る可能性があると言われています。
注射を打ったご本人でもなかなかわからないものも多く、一旦出現してしまうと治療が難しいものもあります。
「ケナコルト-A®」の筋肉注射を1回行うと、注射部位からゆっくり継続して体内へ放出、吸収され、3~4週間程度連続で作用し続けます。
しかし、たとえば注射から3日目に副作用が出たとしたら、、、
一度注射してしまうと、体の外に取り除くことができないので、副作用は持続し、悪化してしまうことになりかねません。また、ステロイドの効果を遮断する薬も存在せず、薬が体から消えていくのを待つのみとなってしまいます。
さらに、「どんな薬剤を打っているかさえも知らずに治療されていること」、「他の治療法と比べずに、1回で済むということだけで選んでしまっていること」も問題点です。
当院では、鼻アレルギー診療ガイドラインに基づき、重症度に応じた治療を基本としています。
本ガイドラインにおいて、ステロイドの筋肉注射はどの重症度においても推奨されていません。
安易にステロイドの筋肉注射は行わず、重症度に合わせた適切な治療を行いましょう。
注意!
ステロイド薬すべてを安易に怖がってはいけません。
重症・最重症の場合は、短期間だけステロイド薬(セレスタミン®など)を使用したり、体に影響の少ない点鼻ステロイドを使用したりすることはガイドラインにも定められた適切で、効果的な治療法です。
最後に
花粉症やアレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患は、内服薬や点鼻薬、外用薬、吸入薬など、様々な方法でつらい症状をコントロールし、健康な人と変わりない生活を送れるようにすることを目標にする疾患です。
ただし、「治療」を続けておられる方の中には薬も使う必要がなくなり、治ったとしか言いようのない方がいらっしゃるのも事実です。しかし、それが治療によるものなのか、あるいは自然経過でそうなったのかについては根拠があるものはありません。
そもそも、花粉症の症状に関しては、その年の花粉の飛散量によっても違いますし、その時の体調によっても違ってきます。治療法も様々あり、その方によって、どの治療法がよいのかも異なります。
最近では副作用の少ない抗アレルギー薬が増え、薬の選択肢も広がっています。また、眠気がないという点では漢方薬も選択肢の1つです。
その他、舌下免疫療法、抗IgE抗体オマリズマブ(ゾレア®)、および手術療法など、当院では様々な治療法を組み合わせて治療を行っています。
花粉症の症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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